⚽=徐波 🎬= 辻友貴
🎬:これまでの来日ツアーで印象に残ってるライブはありますか?
私過去3度ライブ観れました、毎回ライブの完成度も音もパワーアップしていて感動します。
⚽️:日本でのライブは毎回忘れられない瞬間がたくさんあるので「どの公演が一番印象に残っているか」と聞かれると難しいですね。頭の中には消えないシーンがいくつも交錯しています。
その中でも、初めて札幌の161倉庫で演奏した経験は特に強く心に残っています。音響や環境は正直シンプルで、PAさえなかったのですが、それでもあの場所が大好きになりました。まるで昭和時代のアンダーグラウンド音楽シーンに時間が止まっているような感覚でした。観客も共演バンドもとても熱気があり、ライブ後の打ち上げでは、驚くほど豪華な料理が並んでいて感動しました!
いつも僕たちのライブを観に来てくれてありがとう。
僕たちのバンドの成長は本当にゆっくりで、自分ではなかなか実感できないことも多いです。だから、そう言ってもらえるととても嬉しいです!
今回の日本ツアーでは、自分たちの音響エンジニアと照明スタッフも一緒に連れて行けることになりました。僕たちの音楽の世界観を、より完全な形で表現できればと思っています。
⚽️:特に印象に残っているライブの経験はありますか?ステージ上で観客とのインタラクションがパフォーマンスに影響を与えたことはありますか?
🎬:やはり自分達が主催するOOPARTSは格別です、全力で楽しもうとしてくれるお客さん、出演者との交流でその日にしか出来ないライブになっていると思います。それとは関係なく自分がライブ中に骨折や怪我をして中断したライブは特に印象に残ってます笑
🎬:OOPARTS(cinema staff)のことは知ってくれていたということですが、どうゆうきっかけで知ってくれましたか?
今回のOOPARTSのラインナップで気になる/好きな/楽しみにしているバンドはいますか?
チケットは既にソールドアウト、個人的にもあのステージでライブを見られること楽しみです。
⚽️:このジャンルが好きな人にとって、このラインナップは注目せずにはいられません!
僕はよく冗談で「これは現代の残響祭だ」と言っています(笑)。
Chinese Football を結成したばかりの頃、僕たちはみんな残響系のバンドが大好きでした。僕は、残響系のバンドこそが、当時の東洋から西洋の “emo” への最高のアンサーだと思っていました。
the cabs、cinema staff、People In The Box、9mm Parabellum Bullet、té など、あの時代のバンドたちは、“emo” の持つ激情と東洋的な繊細さを見事に融合させ、音楽的な追求も非常に純粋でした。
そんな憧れのバンドたちと今回共演できるなんて、本当に光栄です!
そして後から知ったのですが、このフェスは cinema staff が自分たちの地元で開催しているんですね。それを知ってすごく感動しました。
僕たちも、いつか自分たちの故郷である 武漢 のために何かやりたいと思っています。今回の経験から、何か学べることがあればいいなと思っています!
⚽️:OOPARTS のような、皆さんが主催するフェスティバルでは、出演者のラインナップを選ぶ際に最も重視する要素は何ですか?
🎬:フェスが多くなった現在では、いかにcinema staffにしか作れないラインナップにするかを重要視しています。場所的にバンドがあまり来ることが出来ない岐阜ということも重要だと思っています、海外アーティストが演奏することも少ない土地なので今回もChinese Footballに出演していただけること非常に光栄に思います。
中国でもフェスが多くなっていると思いますが、バンド主催のフェスも増えていますか?また中国の好きなフェスも教えて欲しいです。
(昔チャイフトの来日公演を観た後、フジロックでジョハと再会できたの印象深く覚えてます)
⚽️:はい、ここ数年、中国では本当に音楽フェスが増えていて、ほとんどの都市にそれぞれのフェスがあるような状況です。
多くのフェスは今でもレーベルや企画会社、プラットフォームによって主催されていますが、バンド自身が中心となって企画するフェスも少しずつ増えてきています。
ただ、OOPARTSのように、何年も継続して開催されていて、はっきりとした理念と独立精神を持った「バンド主導のフェス」は、中国ではまだ非常に珍しくて、僕たちもとても憧れていますしリスペクトしています!
個人的には、成都で開催されている「春游音楽節」と、最近出演した舟山の「CAN音楽節」がとても印象に残っています。
どちらも都市部から離れた自然の中で開催されるフェスで、ロケーションが最高なんです。
「春游」は友達と一緒に休暇を過ごすような、のんびりした雰囲気が魅力で、「CAN」はポストロック/インスト系のバンドが多く集まる、まさにそのジャンルのファンのためのフェスという感じでした。
🎬:日本の好きなアーティストを教えてください。 共演したいバンドはありますか?
⚽️:好きな日本のアーティストは本当にたくさんいます。
細野晴臣、山下達郎、Cornelius、Fishmans、Supercar、Number Girl、Zazen Boys、tricot、Shugo Tokumaru、Buffalo Daughter、Tenniscoats、toe、envy、eastern youth、mitsume、そして昔の残響レコードのバンドたち!これらのアーティストのレコードを見つけたら、必ず買ってしまいます。
最近特にハマっているのは CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN で、うちのギタリストは betcover!! にどっぷりハマっています。このリストに挙げたアーティストとは、どのバンドともぜひ共演したいですね!
🎬:日本の音楽シーンをどう見てますか?本国の音楽シーンや他の国とどのような違いがありますか?
⚽️:一番実感するのは、日本には本当にバンドが多いということです!
日本ではどんなジャンルにも熱心なファンがいる印象があります。例えば、今ではそこまで流行していないヴィジュアル系でも、まだ多くのファンがいる。でも、中国ではもうかなり少なくなっています。
実際に僕たちの日本のライブでも感じるのですが、観に来てくれるお客さんの半分以上が、自分たちでもバンドをやっているんです。みんなお互いにリスペクトし合い、学び合っている。
こういう環境が、日本のバンドのレベルの高さにつながっているんだと思います。
🎬:今回ワンマンライブを行うリキッドルームの印象はありますか?リキッドルームでライブをみたことがありますか?2024年にはcinema staffでも8週連続ライブをやった場所でもあり大好きな場所なのでココでチャイフトがワンマンをやるの楽しみです。
⚽️:以前、YouTubeで好きなバンドのライブ映像を観ていると、LIQUIDROOMで演奏していることが多くて「いつか自分たちもここで演奏できたらいいな」とずっと思っていました。まるで憧れのバンドに少し近づけたような気がして、純粋にそれだけで嬉しいです!
それに、僕たちは毎回日本でライブをするとき、セットは大体40分くらいなので、バンドの全貌をしっかり見せる機会がなかなかありません。
今回は、中国ツアーのときのように、90~120分のフルセット を演奏できたらいいなと思っています!
cinema staff の「8週連続ライブ」という企画、僕も知っていました。本当に素晴らしい取り組みですね!
特に尊敬するのは、cinema staff が同じシーンのバンドだけでなく、新進気鋭の素晴らしいバンドたちも招いて共演していることです。彼らがこの音楽シーンを盛り上げ、新しいバンドを支えていこうとする姿勢がすごく伝わってきます。
⚽️:バンドがある程度の「知名度」を得て、メインストリームから注目されるようになったとき、その先に何をすべきなのか——cinema staff はすでにその答えを示しているのではないかと思います。
「どこへ向かうか」よりも「自分はどこから来たのか」を大事にしているように感じますが、実際のところどうなのでしょう? そうした責任感のようなものは、やはり自然と生まれてくるのでしょうか?
🎬:仰る通り確かに「自分はどこから来たのか」を大事にいているかもしれません。
長い活動の中で大きな会場やメジャーシーンでもやることによって関わる人も増え、より沢山の方々に観てもらったりして得られるものも多く素晴らしい経験がたくさん出来ましたが、やはり自分達を見失ってしまいそうになることもあり、その時々に自分達が元々影響されたものや関わることの少なくなってしまったお世話になった方々、しいては地元岐阜のこと等考えることが同時に増えていったのも事実です。それもあって地元岐阜でOOPARTSを主催をしたり、昔からの繋がりと新しい交流を繋いでいくことを大事にしています。何よりも難しいのはそれをメンバー全員で共有すること、大事なのはメンバー全員がそれぞれを理解して前に進んでいくことだと思っています。
⚽️:皆さんの音楽作品は非常に感情的な深みがありますが、作曲の際、感情をどのように表現していますか?特別なインスピレーションの源はありますか?
🎬:cinema staffの作詞作曲は主にベースの三島が担当していますので、彼に聞くのが一番ですが(返答者が自分ですみません笑)、やはりリスペクトする様々な音楽からどう自分達なりに昇華してアウトプットするかは大事にしています。
🎬:日本で音楽以外で好きな場所、好きな食べ物、文化等は何がありますか?
⚽️:僕は自然が大好きなので、日本の自然の風景にはとても惹かれます。
以前、熊野古道を歩いたことがありますし、瀬戸内のしまなみ海道を自転車で走ったこともあります。
北海道の地獄谷で立ち上る湯気の中を流れる小川や、祖谷渓の山間に広がる霧の風景も、ずっと忘れられません。
食べ物では、北海道のスープカレーとジンギスカンが特に大好きです!
🎬:中国のオススメのバンドを教えてくれますか?5月のSHANGHAI QIUTIAN (上海秋天)の来日は少し私もお手伝いしていてライブ見られること楽しみです。
⚽️:SHANGHAI QIUTIANのライブはとてもエネルギッシュで、人を惹きつける力があります。僕たちも何度も共演したことがあります。
僕たちがとても好きな中国のバンド Fayzz をぜひおすすめしたいです!toe が好きな人なら、きっと気に入ると思います。でも、toe に比べて、彼らの音楽にはもっとリズムの要素が強く取り入れられていて、ライブを観ると自然と体が揺れてしまうようなグルーヴがあります。
🎬:日本や海外でのライブはライブハウスのアンプ?だと思いますが、本国ではどのようなアンプを使って演奏をしているのでしょうか?
海外ライブでは出来ないようなデカいエフェクターのボードシステムや他機材を使ってライブやったりもしていますか?
⚽️:僕たちは中国でのライブでは、基本的に Fender Twin Reverb を2台使っています。
このアンプの音に一番慣れているし、中国のライブハウスでは手に入りやすいからです。実際、中国のライブハウスでよく見かけるギターアンプは Fender Twin Reverb と Marshall JCM 900 の2つが多いですね。
日本では Roland JC-120 が一般的な印象ですが、僕は毎回、理想の音を作るためにかなり時間をかけてセッティングしています。でも、最終的には少し硬い音に感じてしまいます。
なので、最近は海外でのライブでもできるだけ Fender のアンプをレンタルするようにしています。
僕たちの機材システムは比較的シンプルで、ギターアンプと各自のエフェクターボードが中心なので、海外でのライブもそこまで大きな問題はありません。
⚽️:日本のプロのバンドは、ライブでドラムを含むすべてのステージ機材を自分たちで持ち込むことが多いということに気付きました。cinema staff もそうなのでしょうか?
🎬:cinema staffも基本的にステージの機材を全て持ち込むことが多いです。日本という割と狭い島国だからこそ生まれたバンドの文化なのかもしれませんね。ただChinese Football含め海外のバンドの演奏を観る度、機材ではなくバンドの力、演奏力が一番なのだと実感することも多いです。
🎬:本国のライブハウスの環境はどのような感じでしょうか?(cinema staffでは昨年中国へ行く予定でしたが台風でなくなってしまいました)
⚽️:中国のライブハウスは基本的に日本のライブハウスのスタイルを模倣しており、ステージの設備は整っています。特別な要求があれば、レンタルで対応することもできます。そのため、海外からのバンドが演奏する際にも問題はありません。
それに対して、欧米ツアーでは、演奏場所にはPAシステム以外は何もないことが多いので、バックラインは自分たちで準備しなければなりません。私たちは通常、ゲストバンドのドラムを借りて演奏しています。
中国での公演予定のことを聞きました。実は、あなたたちの中国のプロモーターは、私たちが武漢で仲良くしている友人でもあるんです。中止は残念ですが、またすぐに中国での公演を楽しみにしています!
⚽️:日本のライブハウス文化は非常に成熟していますが、今の若いバンドがこのような環境で目立つためにはどうすれば良いと思いますか?
🎬:とても難しい質問ですね。。。僕らはひたすらライブハウスでひたすらライブをして成長できたという経験はありますが、今の時代ひたすらライブをすれば良いという訳でもきっとないですよね。。。SNSやサブスク含めて色々な要素が必要な時代なのかなとは思っています。
🎬:逆に中国で若いバンドが注目されるようになるには何が大事だと思いますか?
⚽️:Chinese Football も、cinema staffと同じように、ライブハウスから少しずつ成長してきたバンドです。最初はさまざまなバンドのゲストとして出演して、その後何度も全国ツアーを行いながら、少しずつ自分たちのリスナーを増やしてきました。
おっしゃる通り、このような成長の道のりは今ではどんどん難しくなってきていて、SNSである程度注目されないと、なかなかライブを観に来てもらえないような状況になっています。ショート動画も、多くのバンドにとって大きなプロモーション手段になっています。
それでも、僕はやっぱり音楽そのものの力を信じています。良い音楽はきっと、人から人へ伝わっていくものだと思います。
⚽️:多くの新しいファンは「進撃の巨人」を通じて皆さんを知っていますが、アニメのサウンドトラックを作ることには創作上の挑戦がありましたか?多くの日本のバンドにとって、アニメ音楽の制作はバンドの転機になっているようですが、皆さんもそうでしたか?
🎬:はい、自分達も大好きな作品に関われ、普段出来ないような場所でライブが出来たり普段聴いてもらえない人にもアクセスできたのは僕らにとって非常に大きな経験でした。
Chinese Footballもジャケに表す通りアニメが好きということなので日本のアニメの音楽を演奏するのも見てみたいです。
🎬:少し違う質問かもしれませんが、Chinese Footballは本国や今は海外でも沢山のお客さんの前で演奏していると思いますが、そういったきっかけとなったのは自分達ではどのように考えていますか?
⚽️:僕たちはこれまで、けっこう運が良かったと思っています。まず、バンド名が少しうまくできていたんです。海外では American Football やエモ音楽が好きな人たちに見つけてもらいやすかったし、中国では「Chinese Football」という名前がちょっと自虐的に聞こえるんです。バンドを始めた当時、中国では American Football を知っている人はほとんどいなかったので、最初はよく「中国のサッカーチームをネタにしてるのか」といった感じでした。
でも、そういったイメージが逆にバンドの発展を縛るステレオタイプにもなり得るので、私たちはその印象を覆すためにいろいろな努力をしてきました。
⚽️:残響レコード時代は皆さんにとってどのような経験でしたか?当時、私が特に好きだったバンド(例:Texas Pandaa / AFRICAEMO)は活動していないようですが、そのメンバーたちはその後、別の音楽プロジェクトを立ち上げていますか?
🎬:残響レコードは僕らがバンドをやり始めて最初に深く関わったレーベルで全国的に知ってもらえるきっかけになった重要な時期だったと思います。ただ残響レコードの過渡期に在籍し、レーベルの印象が深くついたこともありそこからどう広げていくかというのは今でもずっと苦労している部分かもしれません。
Texas Pandaa / AFRICAEMOは今も個人的には交流があります、両方もしまた機会があったら(the cabsの復活もあるし)ライブをしてくれるのではないかと思っています。中国のバンドが気にしていたということも伝えておきます!
⚽️:日本のインディーシーンの中で、皆さんが非常におすすめしたいけれど、まだ海外のリスナーにはあまり知られていないバンドはありますか?
🎬:今回OOPARTSに出演してくれるEtranger、ald van eyck、Goodbye Gangstersの最近の音源は素晴らしかったです。昨年ANORAK!の中国ツアーでChinese Footballがシークレット出演したときいて自分のことのように嬉しかったです!
malegoatのメンバーがやっているKIDDERは知っていますか?それも私のレーベルLIKE A FOOL RECORDSですし、LFRリリースは今後も注目していて欲しいです笑。中国でも取り扱ってくれるレコ屋やディストリビューター等あったら教えてください!
⚽️:この件は個別に連絡を取り合いましょう!僕自身のレーベル「Sango Records」でディストリビューションや共同リリースのお手伝いができますし、他の中国のインディーズレコードショップやレーベルも紹介できますよ!
⚽️:ライブパフォーマンスを得意とするバンドとして、出演する会場に応じて音響システムやステージのセットを調整することがありますか?また、観客に合わせてセットリストやアレンジを意識的に調整することはありますか?
🎬:今は基本的にPAや照明、楽器テックも一緒に連れていくことがほとんどです。ほぼメンバーのような感じで今のcinema staffにはどれも欠かせない存在となっています。セットリストは基本そのイベントによって変えて挑んでいます、いまだに正解はわかりません笑
⚽️:継続的なライブ活動は、皆さんにとって疲れや倦怠感を感じさせることがありますか?どのように心のバランスを取っていますか?
🎬:ドキッとする質問ですね。。。長く活動してきてもちろん辛いなと思う瞬間は多々あります。ですが、OOPARTSのようなイベントをやり遂げた時のあの何にも変え難い感情が味わえる瞬間があるとやはりやめられません。また、僕らよりも長く続けている大好きな先輩バンドも今もたくさん観ているのでそれも糧になります。
⚽️:音楽と視覚芸術を融合させる試みはありますか?例えば、ミュージックビデオやライブパフォーマンスのビジュアルエフェクトについてです。
🎬:過去のワンマンライブやOOPARTSの会場でも信頼する映像クリエイターに映像を作っていただいた映像を映し出して、演奏したことがありますし、今後もタイミングでそういった挑戦はしていく予定です。
🎬:chinese footballもそういった試みはありますか?
⚽️:今の中国では、バンドもファンもライブでのマルチメディア演出、特にビジュアル面をとても重視しています。私たちもいろいろ試してきましたが、なかなかうまくいかず、自分たちのようなスタイルのバンドには、演奏そのものに立ち返ることが大切なのかもしれないと感じています。ただ、それでもやはりライブパフォーマンスのステージ演出をもう一段階引き上げる方法を見つけたいと思っていて、だからこそ今回このテーマをみなさんと話し合いたいと思いました。